炭素繊維
炭素繊維の特性
炭素繊維には軽くて強く、腐食しないという特性があるだけでなく、導電性、耐熱性、寸法安定性、化学的安定性などにも優れています。
機械・動的特性
- 金属等に比べ比重が小さく(1.7~2.0)、軽い。
- 弾性率が高く(200 ~650GPa)、高剛性である。
- 強度が高い(3000MPa~6000MPa)。
- 振動減衰性に優れている。
- 異方性材料で、目的に応じて適正な構造体設計が可能。
熱的特性
- 不活性雰囲気で耐熱性に優れている。
- 熱膨張係数が小さく、寸法安定性が良い。
- 熱伝導性がある。
電磁特性
- 電磁波シールド性がある。
- X線の透過性が良い。
化学的特性
- 耐薬品性に優れている。
電気的特性
- 導電性がある。
※アクリル繊維を原料としたPAN系炭素繊維及びそれを用いた複合材料の特性
※()内は炭素繊維の繊維軸方向の特性。
当社の炭素繊維技術ベース
開繊技術
開繊とは、炭素繊維束を幅広く、薄く均一に広げて開繊糸を製造する技術であり、OVEX™のベース技術になっています。
開裁のイメージ(断面図)
原糸
炭素繊維原糸は千~数万本のフィラメントが束になっており、その断面は丸か、やや扁平になっています。
開繊糸
千~数万本のフィラメントが拡げられて巾方向に拡がっており、断面は扁平です。
開繊糸織物の優位性
炭素繊維の開繊糸を用いた開繊糸織物には以下のような優位性があります。
薄層化に伴うクリンプ角度の減少により機械的特性の向上
開繊糸織物の積層
炭素繊維開繊糸織物を用いて作製した積層板は樹脂と炭素繊維が均一に分散されており、機械強度が向上します。
従来糸織物の積層
(3Kクロス)
従来の炭素繊維織物(3K)を用いた積層板は樹脂リッチな部分は偏在してます。
02
繊維の伸直性向上が繊維の性能を限界まで引き出す
開繊糸織物の繊維束
薄く・軽く・凹凸が少なく、織角度が小さい。樹脂含浸性に優れ、層間はく離しにくい。疲労特性が高い物性値を示す。
従来糸織物の繊維束
(3Kクロス)
繊維束が太く、表面も凹凸が大きい。繊維束の屈曲により強度低下。樹脂含浸性が悪く、層間はく離しやすい。
開繊糸織物は
繊維のうねりが小さく
応力集中が緩和される
薄層CFRP複合材料の内部損傷抑制効果
03
トランスバースクラックから層間はく離が発生しなくなる
開繊糸織物の積層板
開繊糸織物を使用した積層板はトランスバースクラックが発生しくにになり、層間はく離しにくいため、疲労強度が向上します。
従来糸織物の積層板
(3Kクロス)
従来糸織物の積層板はトランスバースクラックは発生して層間はく離しやすい。
開繊糸織物CFRP積層板の特性
04
引張、曲げ、層間せん断強度が向上
炭素繊維製品
当社の開繊糸や開繊糸織物は従来製品に比べて薄くて軽量に出来上がっている。
開繊糸の幅をコントロールすることで、繊維重量を任意に設計することができる。
薄いため、織物にした場合は織物表面の凹凸が少なく、強度低下が少ない。
開繊糸、開繊糸織物ともに薄いため、樹脂の含浸が容易。
開繊糸
12K~48K(1Kは炭素繊維フィラメント1000本)の炭素繊維束(PAN系ほか)を連続して2~40mmの幅に開繊した開繊糸です。
炭素繊維の種類により開繊できる幅の限界が異なります。
詳しくはお問い合わせください。
開繊糸織物
炭素繊維開繊糸を経糸、緯糸に使用した織物です。
従来炭素繊維織物よりも薄い布帛となり、成形性(樹脂含浸)や物性が向上します。
※ご希望に応じてさまざまな製品の提供が可能です。
詳しくはお問い合わせください。
品番 | 糸種 | 繊維弾性率 [GPa] |
繊維強度 [MPa] |
糸幅 [mm] |
織物幅 [mm] |
長さ [m/roll] |
繊維重量 [g/㎡] |
---|---|---|---|---|---|---|---|
SA-1203T | 標準 | 230 | 4900 | 3 | 1000 | 102 | 63 |
SA-3203 | 標準 | 240 | 4400 | 3 | 1000 | 50 | 63 |
SA-3305 | 標準 | 240 | 4400 | 5 | 1000 | 50 | 65 |
SA-3220h | 標準 | 240 | 4400 | 20 | 1000 | 50 | 80 |
SA-2520Th | 標準 | 235 | 4900 | 20 | 1000 | 100 | 100 |
SA-3212T | 標準 | 245 | 5100 | 12 | 1000 | 102 | 131 |
SA-1208Tn | 標準 | 230 | 4900 | 8 | 1000 | 100 | 205 |
SA-1203I | 中弾性 | 294 | 5490 | 3 | 1000 | 102 | 59 |
SA-1820Ih | 中弾性 | 294 | 5490 | 20 | 1000 | 100 | 75 |
SA-3403I | 中弾性 | 290 | 5800 | 3 | 1000 | 102 | 78 |
SA-1403I | 中弾性 | 294 | 5880 | 3 | 1000 | 102 | 97 |
SA-2208G | 中弾性 | 324 | 7000 | 8 | 1000 | 50 | 101 |
SA-3403U | 高弾性 | 390 | 4700 | 3 | 1000 | 102 | 75 |
SA-2203U | 高弾性 | 425 | 4610 | 3 | 1000 | 102 | 45 |
SA-2208U | 高弾性 | 425 | 4610 | 8 | 1000 | 102 | 105 |
プリプレグ・セミプレグ
用途に応じてさまざまな形状の中間体で提供することができます。また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂など、含浸させる樹脂の種類の変更も可能です。
炭素繊維の開繊糸、開繊糸織物素材に熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を含浸させたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)成形用基材です。
樹脂含浸しているので短時間の熱プレスで成形が可能です。
開繊糸及び開繊糸織物に熱可塑樹脂フィルムをラミネートしたCFRTP(炭素繊維強化熱可塑プラスチック)成形用基材です。柔軟性があることから賦型性が高い材料です。熱プレス成形することによりCFRTPとなります。
製品形態 | マトリクス樹脂 | 製品サイズ | 成型後の厚み |
---|---|---|---|
プリプレグ-B |
PP, PC, PA12, PA6 |
450mm×450mm |
0.085~2.0mm |
プリプレグ-R |
EP |
W1000mm×L50m |
0.071mm~ |
PA12, PA6 |
W450mm×L100m |
0.085mm~ |
|
プリプレグ-TAPE |
PC, PA12, PA6 |
W64mm×L300m |
0.040~0.1mm |
プリプレグ-TAPE Cloth |
PC, PA12, PA6 |
W1000mm×L50m |
0.080~2.0mm |
セミプレグ-L |
PP, PC, PA6 |
W450mm×L100m |
0.085mm~ |
プリプレグ-B
マトリクス樹脂
PP, PC, PA12, PA6, PA9T, PPS, PEEK
製品サイズ
450mm×450mm
成型後の厚み
0.085~2.0mm
プリプレグ-R
マトリクス樹脂
EP
製品サイズ
W1000mm×L50m
成型後の厚み
0.071mm~
プリプレグ-R
マトリクス樹脂
PC, PA6
製品サイズ
W450mm×L50m
成型後の厚み
0.085mm~
プリプレグ-R
マトリクス樹脂
PA12, PA6
製品サイズ
W450mm×L100m
成型後の厚み
0.085mm~
プリプレグ-TAPE
マトリクス樹脂
PC, PA12, PA6, PA9T, PPS, PEEK
製品サイズ
W64mm×L300m
成型後の厚み
0.040~0.1mm
プリプレグ-TAPE Cloth
マトリクス樹脂
PC, PA12, PA6, PA9T, PPS, PEEK
製品サイズ
W1000mm×L50m
成型後の厚み
0.080~2.0mm
セミプレグ-L
マトリクス樹脂
PP, PC, PA6
製品サイズ
W450mm×L100m
成型後の厚み
0.085mm~
ご注意
当社炭素繊維製品は、輸出貿易管理令別表第一の中欄に掲げるリスト規制貨物に該当するものがございます。
また、当該製品を原料として使用した製品もリスト規制貨物に該当する場合があります。
そのため、当該製品を輸出する場合には、経済産業省より輸出許可を取得する必要があります。
詳細は経済産業省 安全保障貿易管理のホームページをご参照下さい。
01
クリンプが小さいので樹脂が均一に分散